大切に守るべきことと、常に変化し続けること

 


こんにちは。有限会社THSの鈴木です。今日は、会社を続ける中で骨身にしみて学んだ「変えてはならないもの」と「変わり続けるべきもの」についてお話しします。

当社には決して手放してはいけない大切なものがあります。理念と基本のルールです。安全第一、約束を守る、嘘をつかない。これは時代が変わっても揺らがない“北極星”のような存在。一方で、私たち自身は新しいやり方を取り入れ、学び直し、成長し続ける必要があります。川の流れが止まれば濁るように、人も現状維持に安住した瞬間から劣化が始まる——経営を通じて痛感してきました。

とはいえ、新しさを“速さ”だけで追いかけると、方向を見失います。数年前、私は業務のデジタル化を一気に推し進めました。チェックリスト、写真管理、報告書作成をすべて新システムに置き換え、翌週から運用——のはずが、現場は混乱。操作に不慣れで作業が遅れ、お客様対応もぎこちなくなってしまったのです。私は反省しました。理念とルールは守りつつ、現場の“手触り”に合わせて段階的に変えるべきだったのだと。そこから小さな実験→振り返り→改善というサイクルに切り替え、同じ改革でも摩擦は少なく、定着の質が上がりました。

日々の反復が人をつくる——これも現場で学んだ真実です。入社3か月のA君は、最初、先輩の指摘に思わず言い返してしまうことがありました。私も若い頃は同じでしたから気持ちはわかります。でもそこで感情を優先すれば、技術も信頼も育ちません。私たちはA君と約束を一つだけ結びました。「返事と挨拶をしっかりとする」。それだけです。1か月後、彼は見違えるほど落ち着き、依頼される前に動けるようになりました。型が心を育て、心が技を磨く。順番はいつも、型→心→技。頭でわかっていたつもりのことが、彼の変化で腑に落ちました。

もう一つ、忘れられない出来事があります。繁忙期、私が焦りで短くなっていた時期に、長年お付き合いのあるベテランの電気工事士さんから「鈴木さん、声がきついよ」と静かに指摘を受けました。反射的に言い訳が喉まで出かけましたが、飲み込み、深呼吸して「教えてください。どの場面でしたか」と聞き直しました。具体的な場面を振り返り、私は現場の前で謝罪。翌朝から“丁寧さ”を取り戻すために、社内で挨拶と返事のリズムを揃える習慣を再開しました。感情をコントロールできない人は成熟とは言えない——自分に向けた言葉としてメモに残しています。

繰り返しになりますが、変えてはならないのは理念と基本のルール。変わり続けるのは自分のやり方と思考の癖。新しい取り組みは“小さく始めて、すぐふり返る”。そして毎日の当たり前(挨拶、5分前行動、道具の手入れ、養生の丁寧さ)を、飽きるほど繰り返す。その積み重ねが、やがて“本質”の輪郭を浮かび上がらせます。知識は入口にすぎません。実践してはじめて、身体に落ちるのです。

時に、目上の人に口答えしたくなる瞬間もあるでしょう。イラッとしたり、ムッとしたり、人間ですから当然です。そこで一拍置いて、敬意を示す。いったん相手を受け止め、事実と向き合い、冷静に提案へつなぐ。この姿勢を保てる人は、技術以上に信頼を得ていきます。現場はいつも人間の“素”が出る場所。だからこそ、心のメンテナンスは技術研修と同じくらい重要なのです。

THSは、理念とルールを軸に、現場で学び続ける文化を大切にしています。型から入り、心を育て、技を磨く。焦らず、止まらず。もしあなたが「昨日の自分を少し超えたい」と思っているなら、きっと相性がいいはずです。最初の一歩は小さくて構いません。一緒に、流れを止めない川のように、静かに、力強く進んでいきましょう。

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