学んだら、教えるまでが上達

インターン生に作業を教えてる写真

あなたは、最近「自分の上達」を誰かの上達につなげていますか?僕は電気工事の現場で、そこに仕事の喜びの核心があると何度も感じてきました。正直、独りでできるようになった瞬間は気持ちいい。けれど、その喜びはまだ半分です。

 

昔話をひとつ。配管の取り回しで苦戦していた若手に、僕は曲げの基準と手の置き方、固定までの工程を一緒に行ってみました。まずは僕がやって見せ、次は若手がやって、最後に理由と言葉に落とす。すると翌週、同型の工事で所要時間が20分縮みました。仕上がりも綺麗。彼の表情に“やれた感”が宿ったのを、今でもはっきり覚えています。

 

ここで出てくるのが藤尾秀昭さんの禅の言葉 ”向上向下(こうじょうこうげ)”。

 

「人は皆生まれると、知らぬうちに向上門をくぐり、向上に励む。

己とは何かを問いかけ、一歩一歩向上の道を上っていく。

しかし、それは独りの道である。

一人を究めんとする孤独の道。

その道の先には向下門という門がある。

それは自分が究めたことを世の人々に示せるか、人にも分かる言葉で示せるかを試される門。

この向下門を下り得た者のみが本当の意味での人生の合格者だ」

 

現場では、それをこんなふうに生かします。

・まず型を合わせる:あいさつ、養生、工具の使い方。小さな“同じ”が品質を支えます。

・理由を言葉にする:なぜこの位置決めなのか、なぜこの順番なのか。感覚を言語化して共有。

・見える化で再現する:作業写真とチェック項目で、任せても同じ水準に届くように。

・教える人も学ぶ:教える過程で自分の曖昧さがあらわになる。そこを磨き直すのが本当の上達。

 

評価の軸も同じです。できる人で終わらず、できる人を増やした人を讃える。独りのスーパープレイより、全員の標準の底上げを喜ぶ。正直、孤独に極める道も悪くない。でも、チームでワイワイ現場を回し、お客様の「ありがとうございました」を増やすほうが、JOY(喜べる瞬間)が多いんです。

 

こんな仲間に会いたい。十八〜三十四歳くらい、明るくて素直、手と頭を両方動かせる人。クラス仲間の成功に拍手できて、失敗は次の練習メニューに変えられる人。最初から完璧じゃなくていい。向上して、向下する……その循環を一緒につくりましょう。

 

見学や雑談からで大丈夫です。道具の感触、現場の空気、先輩の“言葉と手つき”を、その目で確かめに来てください。


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